鉄鋼業界の基本知識

自動車や建設業界などに向けて鉄鋼や特殊鋼材などの生産に携わる業界を鉄鋼業界と呼び、溶かした鉄鉱石から鉄鋼を取り出す高炉、鉄スクラップを原料に鉄鋼を製造する電炉、ステンレスなどを製造する特殊鋼に分類されます。

平成19年までは新興国の建設、自動車需要拡大を背景に成長を続けていましたが、平成20年の世界同時不況により状況が一変しました。世界規模で建設用、工業製品用鉄鋼の需要激減に加え、鉄鋼自体の価格下落も追い打ちとなって鉄鋼メーカーの収益を圧迫しました。

平成25年には建設需要の回復や世界的な自動車需要の拡大、円安などを背景に業績が伸び始めましたが、平成27年には中国、ロシアなどの伸び悩みが原因で再び下落しました。

このように、近年の鉄鋼業界の業績は乱高下を繰り返す荒れたものとなっています。

さまざまな要因が重なり、鉄鋼業界では世界規模で業界再編が相次ぎました。鉄鋼業界世界NO1のミタル・スチールが平成18年にアルセロールを買収し、年生産量9,000トンを超える世界最大の鉄鋼メーカーとしてアルセロール・ミタルが誕生しました。

国内では、国内鉄鋼メーカー首位であった新日本製鐵が住友金属工業を吸収合併し、粗鉄生産量で世界3位を獲得しています。他にも日新製鋼が日本金属工業と経営統合、新日鐵住金が日新製鋼を子会社化するなど再編が頻繁におこなわれています。

鉄鋼業界のM&A動向

前述のとおり、業界全体で再編が相次いでいます。合併などのM&Aで事業を効率化することでコスト競争力を高め海外企業に対抗する動きが見られる他、電炉メーカーが高炉メーカーの市場に参入するなど、従来の棲み分けを超えた再編がおこなわれています。

金属加工業では小規模・零細メーカーの後継者不足と職人の高齢化が深刻化しており、高い技術を継承できる技術者の育成が急がれており、若い人材が揃っている企業へのM&Aを検討する企業が増えています。

鉄鋼業界におけるM&A実行のメリット

売手が得られるメリット
・会社が存続する
・従業員の雇用を守れる。従業員の家族の生活も守れる。
・大手の営業力、知名度を活用できる。財務基盤が安定する。
・負債から解放される。まとまった資金を手に入れられる。
・単独では海外進出が不可能な企業でも、他社との連携で海外進出も可能になる。
・不採算部門、ノンコア部門を生かしてくれる先に譲渡することで、まとまった資金を手に入れ、コア部門に資金注入できる。

買手が得られるメリット
・新たなネットワークの獲得
・小売生産拠点の獲得、生産技術の獲得
・利権を確保できる
・小売販路を獲得できる。
・経営基盤を強化できる。
・一気に拡大できる。
・新たなエリアへの進出
・規模のメリットを享受できる(原価低減、間接コスト低減など)
・自社開発より時間・コストを節約できる
・買収先のブランド、信用力を使える

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